まっしろな遺書
 2015年2月24日

 久しぶりに十三ははしゃいだ。
 年甲斐もなく子どもたちと楽しんだ。
 そして、美穂のはしゃぐ姿を思い出すだけで口元が緩んだ。

「ニヤニヤしてどうしたの?」

 ベッドで横たわる美穂が尋ねる。

「あ、イヤ。
 なんでもないよ」

「もしかして、欲情した?」

「欲情って……」

 十三と美穂が同居するにあたって約束がひとつあった。
 それは、お互いが好きにならない限りセックスはしないという約束だ。

 だから、今の段階ではただのルームメイト。
 同居人なのだ。

 それなのに美穂が十三が入院してから変わった。
 美穂は十三に体まで許すようになっていた。
 しかし、十三はそれを拒み続けている。
 それは、好きな人とするべきだと思っているからだ。

「とりあえずボケモンやるよ」

 十三は、話をそらした。

「そう……
 私は、食堂でご飯を食べた後、仕事に向かうね」

 美穂は、そう言ってベッドから降りた。

「ああ。
 くってらー」

 その後、十三は千春が持ってきた朝食を食べた。
 その際こんなことを言われた。

「ゲームばかりやってないで、歩いて下さいね。
 そうしないと運動不足になってしまいますから。
 できれば毎日歩いて下さいね」

 そして、その際気になることを尋ねた。

「千春ちゃんって姉妹いる?」

「あれ?言ってませんでしたっけ? 
 春雨 銘。
 詩空さんの担当医のはずなんだけど、まだ会ってませんか?」

「あ……
 歩ちゃんの所で会ったかも」

「お姉ちゃん、小児科も担当してるんですよー」

「そうなんだ……」

「はい!
 あ、私そろそろ行かなくちゃ……
 お薬きちんと飲んでくださいね!」

 千春は、そう言うと部屋を出た。
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