まっしろな遺書
 2015年2月26日

 十三は、朝から姿が見えない美穂を探し病院内をウロチョロした。
 すると歩と仲良く手を繋いだ美穂の姿を見つけることが出来た。

「あ、お兄さん発見」

 歩が嬉しそうに十三の方を見た。

「ふたりともこんなところでどうしたの?」

「今日はね、たこ焼きおじさんのたこ焼きの日なんだよー」

 歩が笑う。

「たこ焼きの日?」

「たまにたこ焼きのおじさんがたこ焼きを作ってくれるだー
 タダで食べれるからお兄さんも一緒に行こうよ」

 歩は、そう言うと十三の手をギュッと握りしめる。

「美味しいらしいよ?
 十三も一緒に行こう」

 美穂が、そう言って笑う。

「そうだね」

 病院食に飽きた十三は、たこ焼きも悪くないと思った。
 十三たちは広場に向かった。
 たこ焼きの甘いソースの匂いが広場を包み込んでいた。

「たこ焼きのおじさん!」

 歩が、十三たちから手を話しその男性の方に向かって駆ける。

「歩ちゃんは、いつも元気だね」

 そう言ってたこ焼きのおじさんは、ニッコリと笑うと歩ちゃんにたこ焼きを発泡スチロールで出来た箱に入れてくれた。

「はい、お兄さんとお姉さんもどうぞ……」

 たこ焼きのおじさんは、十三たちにもたこ焼きの入った箱を渡した。

 カリッとしていて、中はとろり。
 熱くて美味しかった。

「お味はどうだい?」

「美味しいです!」

「それは、よかった」

 たこ焼きのおじさんは、ニッコリと笑うと次に待っている子供たちのところにたこ焼きをくばりにいった。

「美味しいね」

 美穂が、微笑む。
 猫舌なはずの美穂が、パクパクとたこ焼きを食べている。
 やはり、これはおかしい……
 十三は思った。

  たぶん、この子。
  美穂じゃない。

 十三は、心の中でその答えを導き出した。
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