まっしろな遺書
 2015年3月14日

 今日は、ホワイトデー。
 十三は、インターネットでチョコレートを買って美穂の家に届くように注文していた。

「今ごろ届いているかなぁー」

 十三は、そんなことを考えながらチョコレートを口に運んだ。
 十三は、ふと昔の友人の自由のことを思い出す。
 十三にバレンタインに生まれて初めてチョコレートをくれたのが自由だった。
 義理チョコだったが、十三は嬉しかった。

「チョコレート好きって聞いたからあげる」

 そう言ってくれたチョコレートは、手作りだった。

「え?」

 十三は、驚く。
 それは、嫌がらせにしては手が凝っていると思ったからだ。

「あれ……
 もしかして嫌いだった?」

「好きだけど……
 どうして?」

「チョコレートをあげるのに理由っているのかな?」

「いや……
 いると思うけど……」

「どういう時にいるのかな?」

「それは……好きな人とか」

 十三の声が小さくなる。
 これは、何かの嫌がらせに違いない。
 そう思ったから……
 自由の存在は知っている。
 学年で一番可愛い女の子と言われている。
 だから、嫌がらせか罰ゲーム以外で自分に話しかけてくれる理由はないだろう。
 そう思うと十三は少し怖くなった。
 どんな罰が与えられる?
 どんな恐怖が待っている?
 いろんな状況を考えた。
 考えて想定することにより、自分の心のダメージを少しでも減らすために……

「じゃ、そういうことなんかじゃないかな?」

「え?」

「『え?』じゃないよ。
 女の子の精一杯の気持ち、無下にする気?」

「えっと……」

 十三は、言葉に迷う。

「好きだよ。
 十三くん」

「え?」

 嘘だとわかっている。
 嘘だとわかっているはずなのに十三の鼓動が早くなる。

「だから……
 友達前提に付き合ってください」

 自由が、そう言うとすぐに訂正した。

「じゃなかった恋人前提に付き合ってください。
 あれ?結婚?それはすっとばしすぎだよね。
 とりあえず付き合ってよ」

「本気で行っているの?
 そんなことしたら君が、嫌がらせされるよ?」

「誰が誰に?」

 自由が、十三に尋ねる。

「それは、みんなにだよ」

「みんなねー
 みんなが、怖くて恋なんかできるかー!」

 自由が、そう言って笑う。

 それは、中学一年の甘い冬。
 十三、初恋の瞬間だった。
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