まっしろな遺書
 2015年3月18日


 今日は、院内学級でお絵かき大会があるらしく子どもたちは十三を誘った。

 だけど、十三にはには欠点と言うか苦手なことが沢山ある。
 その中のひとつ。
 それは、絵が物凄く下手だと言うことだ。

 このことを知っているのは、十三とその友人数名だけだった。
 十三は、とりあえず病院内にいる猫の絵を描いた。

「うん。
 見事までに下手な絵だ」

「お兄ちゃん絵書けた?」

 愛が、そう言って俺の絵を覗き込む。
 十三は、笑われることを覚悟した。

「お兄ちゃんの絵、個性的だね」

 愛は、苦笑いを浮かべた。

「兄ちゃん、絵、下手だな……」

 元太が、そう言って笑う。

「笑っちゃダメ」

 愛が、元太を睨む。

「だってよー」

「人には得意なことと苦手なことがあるの。
 元太君だって字下手でしょ?」

「あ、ああ……」

 元太の顔が引きつる。

「ちぇー。
 まぁ、いいや。
 俺の神的な絵を見て見ろ!」

 元太君が、そう言って絵を見せる。

「十三さんの絵とあんま変わらないね……」

 愛が、そう言って笑う。
 6歳児の絵と変わらない絵を描く十三……
 その言葉は、十三の心に深く突き刺さった。
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