まっしろな遺書
 2015年3月19日

 十三は風邪をひいた。

 熱は、39.7度。

 看護師は、風邪がうつるといけないため十三の病室には「たちいりきんし」とひらがなで書かれた紙をドアに貼った。
 そのため子供たちは、遊びに来ない。

 十三がゲームをしようとしたら、千代田さんにゲーム機を没収された。

「病人は、寝ていなさい!」

 そう言われたので仕方なしにテレビをつける。
 この病院のせめてもの救いは、テレビとか電気とかカードが無くても利用できるというところだろう。

 なので、子供たちもゲームし放題。
 だから、十三も子どもたちに遊んでもらえる。
 今、テレビでは「笑ったらダメだよ」が、やっている。

 なのに頭のなかに番組の内容が入ってこない。
 頭がぼーっとするからだ。

「失礼します」

 千春が、そう言って十三の病室に入って来た。
 手には、昼ごはんと思われるモノをおぼんに乗せて持っていた。

「あ、千春ちゃん……」

「体調は、どうですか?」

「頭が、ぼーっとします」

「お昼ご飯を持ってきたのですが、食べれますか?」

「お腹は、減っていますが、食欲がありません」

「少しでもいいから食べてください。
 そうしないとお薬も飲めませんから……」

「……うん」

 十三は、小さく頷いた。
 千春は、お盆を机の上に乗せると十三のベッドの隣にある椅子に座った。

「じゃ、口を開けてください」

「ひとりで食べれますよ……」

「いいから、あーんしてください」

「……うん」

 十三は、素直に口を開けおかゆを食べた。
 味は、結構おいしかった。
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