まっしろな遺書
 萌の息子瓜。
 そして、萌の娘である桃。
 その2人が、心配そうに萌の方を見ている。

 萌が、ゆっくり息を吸い込んだ。

「2人に話があるの」

 萌ちゃんは、そう言って二人を見た。

「お母さん?」

 萌は、瓜の目を見る。

「瓜は、強い子だよね?
 だから、桃のことあまりイジメたらダメだよ。
 強い子は弱い子を護らなくちゃいけないんだから……」

「俺、桃のことちゃんと護る!」

 萌は、ニッコリと笑うと小指を出した。

「じゃ、ゆびきりだ!」

 瓜は、震えながら小指を出した。

「ゆびきりげんまん。
 嘘ついたらハリセンボンのーます。
 指切った」

 瓜は、ゆびきりを終えると、涙を零しながら部屋の隅っこへ向かった。
 そして、座り込み声を出さずに涙を流した。

 次に、萌は、桃の方を見た。

「桃……
 桃には色々苦労をかけてしまうと思う。
 もうちょっと大きくなったとき悩みが出来ると思う。
 その時は、銘ちゃんやちぃちゃんに相談してね。
 銘ちゃん、ちぃちゃん、その時はよろしくね」

 銘はうなずき千春は、「任せて!」と力強く言った。

 萌は、「お願いします」と言って軽く頭を下げた。
 そして、萌は、言葉を続けた。

「早く、お洗濯やお料理を覚えて太郎君の力になってあげてね」

「うん」

 桃は、涙を流す事なく。
 じっと萌の話を真剣に聞いた。

「じゃ、桃もゆびきり」

 萌ちゃんは、そう言って小指だけをあげる。
 桃ちゃんは、静かに母の元に小指を近づけ自分から歌を歌った。

「指きりげんまん
 嘘ついたらハリセンボンのーます
 指切った」

 桃は、涙を流さなかった。
 小さくてもやっぱり女の子。
 強いんだなと思った。

 桃ちゃんの指が離れると、萌ちゃんは、太郎の方を見てニッコリと笑った。

「太郎君、後の事はお願いね……」

「任せて下さいっす」

 太郎は、今にも泣きそうだった。
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