まっしろな遺書
 2015年3月30日

 部屋の温度は、18℃。

 萌ちゃんの要望だった。
 体が火照るらしい。
 十三は、上着を羽織っていた。

 コンコンと部屋をノックする音が聞こえた。
 太郎が、返事をする。
 すると千春が、ティーカップとホットミルクが、入った容器を持ってきた。

「寒いと思うから、ホットミルクを持ってきたよ」

 千春は、全員のカップにホットミルクを入れた。
 部屋には、ホットミルクの香りが充満した。

「あー
 良い匂い……」

 思わぬ場所から、声が聞こえた。
 萌は、もう目を覚まさないかもしれない。
 そう言われていたのに目を覚ました。

 十三たちは、一瞬驚いたが安心したように笑った。

「私は、冷たいいちごミルクがいいな」

 萌が、そう言ってほほ笑んだ。
 萌は、笑いながらそう言った。

「じゃ、私が買ってくる」

 千春が、そう言って部屋を出た。
 銘が、萌が話しやすそうにベッドの角度を90度に傾けた。
 そして、小さな小さなティーパーティーを開いた。

 そこに居るのは、同年代の男女。
 そして、俺と太郎と萌は幼馴染。
 話のタネは、沢山ある。
 それから、1時間程話したとき萌は眠そうな声で言った。

「なんだか、眠くなってきちゃった……」

 萌は、そう言うと、すぐに眠りに就いた。

 萌に繋いでいる血圧計。
 それは、ゆっくりと少ない数値を刻んでいった。

 最高血圧は、50を切った。

 そして、午前10時48分。

 萌は、ゆっくりと寝息を立てた後、この世で最後の空気を吸い込み、そして息を引き取った。

 享年28歳。
 あまりにも早い命だった。

 千春が、ゆっくりと銘先生の方を見る。
 銘は、つらそうな表情をしていた。
 銘は、この場だけは、この場だけは医師としてではなく友人としてその場にいたかった。
 しかし、すぐに表情を変えて臨場を伝えた。
 桜が咲こうと懸命に生きる中……
 萌の命の花が散った。
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