まっしろな遺書
 2015年4月2日

 今日は、暖かい。
 綺麗な桜が十三の窓の景色から見える。

「桜が、綺麗だなぁー」

 十三がそんなことを言っているとはるかが、十三の病室に入って来た。

「はるか先生?
 どうしたんですか?」

「実は、これから子供たちとピクニックに行くんです。
 良かったら、十三さんもどうですか?」

「えっと……
 いいんですか?俺なんかが参加しても……」

「来てくれると子供たちも喜びます」

「そうですか……
 なら、参加しようかな」

「ありがとうございます。
 では、出発は、10時からですので、準備が出来たらロビーに来て下さい」

「はい」

「あ……おやつは、500円までです!」

「先生!タバコは、おやつに含まれますか?」

「禁煙です。
 って、タバコをお吸いになられるんですか?」

「いえ、吸わないです」

 十三が、そう言うとはるかはクスっと笑った。

「あら、楽しそうな相談ね」

 ゆかりが、そう言って俺の部屋に入ってくる。

「あ、こんにちは。
 いつも子供たちがお世話になってます」

 はるかが、軽く頭を下げた。

「いえいえ、こちらこそ……」

 ゆかりも軽く頭を下げる。

「よかったら、ゆかりさんも行きませんか?」

 十三は、ふとそんなことを口に出してしまった。

「ごめんね。
 私、こんなお腹だからピクニックにはいけないなぁー」

「あ……
 そうですね……」

「その代り、みやげ話期待してるからね!」

 ゆかりは、ニッコリと微笑むと部屋を出て行った。

「何しに来たんだろ……?」

 十三が小さくぼやくと、はるか先生が小さく呟く。

「みんな、貴方のことを心配しているんですよ」

「そうか、萌ちゃんの件のことを心配してくれているんだね……」

 十三は、日が暮れるまで子供たちとピクニックを楽しんだ。
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