まっしろな遺書
 2015年4月5日

 美穂が帰ってきた。
 お土産いっぱい持ってきた。

 お菓子は、その日のうちに子供たちと一緒に食べた。
 あっという間だった。

「あのねあのね。
 十三。あのね。
 お願いがあるんだ」

 美穂が、照れ笑いを浮かべながら言った。

「ん?
 お願いって……?」

「退院したら、私の実家に来て欲しいの」

「え?
 それは、どういうことかな?」

「ダメかな?」

「突然どうしたの?」

「両親が、十三に会いたいって言ってるの。
 結婚とかそう言うのじゃないから安心して……」

「う、うん……」

 十三は、返答に困っていると病室の扉が開く。

「十三君やっほー」

 ゆかりが、病室に入って来た。

「え?」

 2人の表情が一瞬固まる。

「十三君の噂の彼女?」

 ゆかりが、首を傾げる。

「貴方は?」

 美穂は、ゆっくりと視線をゆかりのお腹を見て目を細める。

「そのお腹……
 私が、いない間に十三と小作りしたの?」

「残念……
 この子は、十三君との子じゃないわ……」

「ホントに?」

 美穂は、俺の顔を見る。

「美穂がいない間で、ここまでお腹の子は成長しないよ」

「そうだけど……
 十三には、十三ミラクルがあるから……」

「ないよ……」

 そのやり取りを見ていた、ゆかりが笑う。

「ふたりとも仲がいいのね。
 十三君とは、普通のお友達だから安心してね。
 私、田村ゆかりって言うの貴方は?」

「私は、杉並美穂です……」

 そういった美穂の顔が険しかった。
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