まっしろな遺書
 2015年4月10日

 十三が怪我したという知らせを聞いた子供たちが十三の病室に集まる。

「お兄さん、怪我したって聞いたけど大丈夫?」

 歩が心配そうに俺に近づく。

「ああ、大丈夫だよ」

「兄ちゃんケンカ弱すぎ……」

 元太が、ケラケラ笑う。

「大人の世界では、殴られても殴りかえしたら罪になることだってあるんだ」

「この場合、正当防衛ですよ」

 十三の一言に充がすぐに答える。

「前より男前になったんじゃない」

 隼人が、そう言うと十三は照れ笑いを浮かべる。

「うっさいな……」

「怪我、痛そう……」

 愛が、心配そうにお守りを十三に渡した。

「これは?」

「病気が早く治るお守り。
 ママに貰ったの……」

「これは、愛ちゃんが持ってないと……」

「怪我が治るまで、お兄ちゃんに預ける」

「そっか……
 ありがとう」

 十三は、暫く預かることにした。
 愛は、ニッコリと笑うと隼人の後ろに戻った。

「相変わらず子供には、好かれてるわね」

 ゆかりが、そう言って十三の部屋に入ってくる。

「個人的には、若くて綺麗なお姉さんにモテたいですね」

「あー。
 そのセリフ、美穂姉ちゃんに言ってやるんだー」

 歩が、そう言って笑う。

「言わなくても大丈夫だよ。
 だって、その綺麗なお姉さんって美穂お姉さんのことだろうから」

 隼人が、小さく呟く。

「美穂さんが、羨ましいな。
 十三君みたいな彼氏がいて……」

「……え?
 ゆかりさんもお兄さんのことタイプなの?」

 歩が、そう言うとゆかりさんは、苦笑いを浮かべた。
 十三にはまだ、この笑顔に意味がわからなかった。
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