まっしろな遺書
 2015年4月11日


 まだ肌寒い4月。
 美穂は、仕事が休みらしく十三に付きっきりだ。
 十三は、ずっと気になっていたことを美穂に尋ねてみた。

「美穂、この病院の入院費のことなんだけど……」

「うん」

「個室だし高くないのか?」

「大丈夫だよ。
 この病院、私のお父さんの弟の病院だから……」

「え?」

「だから入院費はタダで良いって言ってたよー」

「それは、少し気を遣うな……」

「私が、お願いしたの。
 そっちのが、十三と同じ布団で寝ても怒られないでしょ?」

「そ、そうだね……」

「ってか、美穂のお父さんは何をしている人?」

「ヤクザ」

「え?」

「嘘だよ。
 お父さんは、満点堂の社長だよ」

「満点堂って、文具メーカーの?」

「うん」

「超大手じゃんか!」

「うん」

「ちなみに私もお姉ちゃんもそこの子会社で働いているよ」

「そうなのか?」

「うん」

って、あれ?お姉ちゃん?

「って、あれ?
 お姉ちゃん?」

「あー。ごめん、妹」

 美穂は前にも間違えたことあった。
 口調もかなり変わった。

「そっか……」

 だけど、十三は深く聞かないことにした。

「十三」

「なに?」

「久しぶりにしよっか?」

「何を?」

「キス」

「……え?」

「ダメかな?」

「ダメじゃないけど……
 この間しなかった?」

「あれは、別腹!
 本格的なキスをしようよ!」

「まぁ……
 美穂がいいのなら……」

「はい、では……」

 美穂の目が十三の目を見つめる。
 そして、ゆっくりとふたりはキスをした。
  タバコの香がしない。
  美穂……タバコ辞めたのかな?
 十三は、そう思いつつも美穂に身を委ねた。
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