まっしろな遺書
 2015年4月15日

 桜がもうほぼ散った春の日の朝。
 十三は、ふと萌えのことを思い出した。
 萌は、誰にでも優しい女の子だった。
 それでいて、胸も大きく容姿も可愛い。
 高校生の時の文化祭、美人コンテストで優勝したこともあった。

「また、あの笑顔が見てみたいな……」

 十三は、そんなことを呟いた。
 すると部屋の扉が開く。

「十三君、またごめんね……」

「ゆかりさん……」

「怪我は、大丈夫?」

「大丈夫だよ」

 ゆかりは、苦笑いを浮かべるとベッドの隣の椅子に座った。

「この子ね……
 障害を持って産まれてくるかもしれないんだって……」

「え?」

「私が不良品だから……」

「不良品?」

 意味がわからない。

「私が健康な体だったらな……」

「どっか悪いんですか?」

「わかんない……」

「と言うか、小十郎だっけ?
 結婚してたんですよね?あの人の何処を好きになったんです?」

「お見合いだったんだ……
 親の政略結婚ってヤツかな……」

「え……?」

「DVってヤツかな。
 それが酷くて離婚したんだけど……
 それを根に持って今も追いかけまわされてるの」

「警察は?」

「動いてくれないよ。
 何度も相談したもん……
 それでね、父の知り合いの病院を紹介してもらってこの病院にかくまってもらっているんだ……」

「そっか……」

 十三は、いろいろ思うことがあったがそれ以上は言わないことにした。
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