まっしろな遺書

　2015年4月18日

「うーん。
　まだかな？」

　十三は、焦りながら美穂に話しかける。

「十三、落ち着きなよ。
　十三の子じゃないんだしさ……」

「そうだけど……」

　十三は、分娩室の前をウロチョロ歩く。

「ゆかりさんの赤ちゃん産まれるの？」

　歩が、そう言って心配そうに近づいてくる。
　愛や元太、隼人に充も一緒に居る。
　そして、小太郎も一緒に居る。

「うん。
　もうちょっとで産まれるんだけど……
　なかなかの難産みたいね」

　美穂が答えると愛が尋ねる。

「私たちもこんな風に産まれたのかな？」

「そうだぞ、みんなこうやって心配されて産まれてくる。
　生まれた時は、みんなで祝福するんだぞ？」

　十三が、そう言うと子供たちが声をそろえて頷く。

「うん！」

　和やかな空気が、包み込む。
　しかし、その空気は、すぐに壊れる。

「ゆかり！ゆかりはいるか！」

　小十郎が、叫び声をあげてやって来た。

「また、来たよ……」

　美穂が、ため息をつく。

「貴様！ゆかりの！」

　小十郎は、十三を見つけ睨みつけると一気に間合いを詰める。
　そして、拳をあげ俺を殴る。
　再び拳をあげた時、小太郎が小十郎の腕を掴み押さえつける。

「あー。
　なんだっけ？
　そうだそうだ。傷害の現行犯で逮捕する」

小太郎は、そう言ってため息をつく。

「離せ！離せ！俺は、ゆかりに会いに来たんだ！」

「ゆかりさんに何の用なんだ？」

　俺の問いに小十郎は答える。

「決まってるんだろ？腹を蹴るんだよ！流産させるんだよ！
　アイツは、俺の玩具だ！子供を産むなんて絶対に許さない！」

　十三は、小十郎を睨んだ。

　　コイツは、コイツだけは許せない。

　十三は、思って小十郎の前に立ち睨む。

「十三、腹が立つのはわかるが殴るなよ？」

　小太郎が、そう言うと数名の警備員の人が、十三たちの近くにやってきて、小十郎を押さえた。

　そして、小十郎は、傷害の現行犯で逮捕されることになった。