まっしろな遺書
 2015年4月19日

 今日、新しい命が誕生した。

 新しい命は新しいままで……
 それでいて残酷だった。

 単眼症。

 先天奇形の一種の病気で目が一つしかない病気。

 十三は、気になるのでウィキペディアで調べてみた。
 そこには、こう書かれていた。


  本来2個ある眼(目、眼球)が顔面の中央に1個しか形成されず、鼻の位置や形も異常を呈するか無形成となる。
  脳の形成異常に伴う重症の奇形で、ごく稀であり、ほとんどが死産もしくは出生直後に死亡する。
  ヒトのみならず動物にもみられる。


  単眼症の子供が生まれる原因の1つは、ビタミンA摂取不足が上げられる。
 また、医学的な裏付けはないが、ドメスティックバイオレンスなどの強い精神的ストレスが原因となるとも考えられる。

 とも書かれていた。

 ゆかりは、赤ん坊をみんなに見せようとはしなかった。
 ゆかりは、部屋に閉じこもり、赤ん坊を見た時、大きな鳴き声をあげたらしい。

 ハンデを持つ子だと言うことは聞いていた。
 だけど、ここまで現実が残酷だとは、思っていなかったのだろう。

 ゆかりに与えられた試練は、あまりにも残酷だった。

 単眼症の子は、大人にはなれない。
 大人になる前に命を落とす。
 重い知的障害を伴うと考えられているが、誕生してもほとんどの場合1年以内に亡くなるため詳細はわかっていない。

「十三、パソコン見ているの?」

 美穂が、そう言ってベッドの隣にある椅子に座る。

「うん」

「ふーん」

 美穂は、そう言ってパソコンを覗き込む。

「ウィキペディア?」

「うん。
 ちょっと単眼症について気になってね……」

「ゆかりさんの赤ちゃんのこと?」

「うん」

「ゆかりさん、大丈夫かな?」

「大丈夫じゃないと思う。
 自分の子供が、この写真の子のようになるって……
 結構残酷だしね……」

「そうだよね……」

「ゆかりさん、今は個室に引きこもっているらしい……
 ご飯も食べてないみたいで……」

「私たちが、支えにならなくちゃね」

「でも、何が出来るんだろ……」

 十三たちは、考えた。
 考えて考えて考えた。
 だけど、答えなどでない。
 なぜなら、何もしてあげれないのだから……
 十三たちは自分の無力さに悔し涙を飲んだ。
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