まっしろな遺書

　2015年4月20日

　子供たちが、十三の部屋に集まって作戦会議。
　ゆかりを部屋から出す作戦会議。

　ゆかりは、出産後何も食べてない。
　そのため、美穂も真剣になって子供たちの話を聞いている。

「お兄さん何か良い案無い？」

　歩が、十三に尋ねる。

「んー。
　昔話でな、洞窟に引きこもったお姫様がいてね。
　洞窟の前でお祭りをして、その楽しそうな雰囲気が気になったお姫様は顔を出すんだ」

「その話知っているけど、病院内で騒いだらダメだよ」

　隼人が、そう言って苦笑いを浮かべる。

「たこ焼きパーティーとかは？」

「たこ焼きパーティーは、来週の予定ですから、その間にゆかりさんが、餓死しちゃいますよ」

「餓死するのかな……
　それは、わからないけど栄養は早めにとって貰いたいね」

　予定を早めるのは出来ないだろう。
　何故ならもう告知をしてしまっているから……

「私、お姉さんと話してくる！」

　歩は、そう言って十三の部屋を出ようとする。
　すると扉の向こうには、はるかが、立っていた。

「はぁ……
　やっぱりここに居たのね……
　授業、もう始まるわよ」

「でも、私たち……」

「そっとしておいてあげるのも優しさよ？」

　はるかが、そう言うと歩たちはしょんぼりとした。

「そうだけど……
　一番つらいのは赤ちゃんだと思うの！
　だって、お母さんに会えないの辛いもん！」

「……そうね。
　まぁ、いいわ、今日は、そこの暇人ふたりをゲストに招待して、教室でその件について話し合いましょう」

「え？」

　歩が目を丸くさせる。

「ゆかりさんのこと、先生も心配だから……」

　はるかは、そう言うとニッコリと笑う。

「はるか先生ありがとう！」

　歩が、はるか先生の足を抱きしめる。
　そして、十三たちは教室で、ゆかりを部屋から出す作戦を考えた。
　しかし、答えは出なかった。

　ひとりひとり、ゆかりさんに声を掛けよう。
　そういうことになった。

　それが、吉とでるか凶と出るかわからない。
　しかし、十三はそれしか方法はないと思った。

　十三たちは、明日。
　ゆかりに話しかける。
　部屋の外からの言葉になるが、少しでも届けばいいと十三は思った。