まっしろな遺書
 2015年5月2日


 色んなことがあった4月も終わり5月がやって来た。
 この歳になると時間が過ぎることに罪悪感と虚しさを感じるようになる。
 これって、なんでなんだろう……
 ってか、そんな歌があったような気がする

「十三、早くいかないとたこ焼き無くなっちゃうよ?」

 美穂が、そう言ってベッドで横になっている十三の背中を軽く揺らす。

「そうだね……」

 十三は、ゆっくりと体を起こす。

「ささ、早く行こう!」

 美穂が、はしゃぐ。

「そんなに急がなくてもたこ焼きは逃げないよ」

「たこ焼きは逃げないよ?
 でも、食べられちゃうもん!」

 美穂は、頬を膨らませる。

「そうだね。
 確かにそうだ」

 十三は、なんか可笑しくなって笑った。

「十三、どうかした?
 元気ない?」

「うん?
 そんなことはないよ?」

「だったらいいんだけど……」

 美穂がしょんぼりとする。

「どうした?」

「十三、ゆかりさんのこと好きだったのかなって……
 ゆかりさんが、いないから元気ないのかなって……」

 美穂が今にも泣きそうな顔をする。

「俺は、どっちが好きかって聞かれたら美穂だよ?
 なんだかんだ言って付き合いも長いからね」

「ホント?」

「うん」

 美穂が、つらそうに笑う。

「じゃ、たこ焼きパーティー行こう!」

 美穂が、十三の手を握ると一緒に公園に向かった。
 そして、十三たちはたこ焼きを食べた。
 
 山本のたこ焼きは、カリトロで美味しい。
 十三はこの味を忘れてはいけない。
 ふとそんな気がした。
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