まっしろな遺書
 2015年5月3日


 たこ焼きは美味しい。
 十三は昨日ほど、そう思ったことはない。

 子供たちは、歌を歌っている。

「たこ焼きくるりんこ♪」

 どっかで、聴いたことのある歌だけど思い出せない。

「ふたりともいらっしゃい」

 山本が、そう言ってパックにたこ焼きを8個入れてくれる。
 十三と美穂は、1箱ずつもらうとお礼を言ってそれを受け取ると公園のベンチに座る。

「美味しそうだね」

「うん。
 美味そうだ」

 十三たちは、そのたこ焼きを食べていると歩たちも近くに集まる。

「お、歩ちゃんたちも来たか……」

「うん!
 私、山本さんのたこ焼き大好き!」

 歩が元気に笑うと元太君も、笑う。

「俺も山本さんのたこ焼き好きだぞ!」

 元太は、たこ焼きの入った箱を3つ持っていた。

「沢山食べるんだな……」

「子供の仕事は、食べることだぞ」

「運動しないと十三見たいなお腹になるよー」

 美穂が、そう言うと十三のお腹を揉む。

「揉むな揉むな……
 揉み返すぞ?」

「お兄ちゃんは、お姉ちゃんの何処を揉むの?
 やっぱり胸?」

 愛が、小さく呟く。

「それは、2人きりの時だけだよ」

 美穂が、笑う。
 子供の前で何を言っているんだ……と十三は思った。

「そうなんだ……
 お兄ちゃんは、胸のある男の人が好き?」

 愛が、俺の目を見る。
 他の子供たちも俺を見る。
 美穂まで見ている。

「胸は……大きさより。
 中身だ!」

「え?」

「心はでっかく生きて行こう!」

 十三は、そう言うとたこ焼きを1個口に入れるとその場を逃げるように去った。
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