手紙-あなたへ。-
「要くん」


私はなぜかいつも
要を呼び捨てには
できなかった。

私にはない考え方を
要が持っていた。

要にはない考え方を
私が持っていた。

いつの間にかそれが
私たちの間でお互いを
尊敬になっていた。


「麗奈?」


くわえ煙草をふかしながら
私は知らない間に
自分の世界に
入ってしまっていた。

しかも店のカウンターの中で。


「何笑ってるの」


ママが苦笑いを浮かべて
私を見ている。


「ごめん!!
何でもないでえす」


半笑いのままお客さんに
向き直って驚いた。

そこには一升瓶を抱えた
じゅんくんがいた。


「…いつ来たの?」


神出鬼没とはこの人の事。


「ずっといたぞ」


屈託のない笑顔を
じゅんくんは浮かべた。
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