キミと見た、あの空を。


入学式はすごく退屈だった。
偉い人の話は、よくわからないし。


だから、遥香とヒソヒソ声でずっとおしゃべりしてた。



「_____以上を持ちまして、入学式を終わります。」




『新入生は、退場して下さい。』




「はぁあ!終わったぁ!!」




体育館からでた瞬間、遥香がおっきい声で叫んだから びっくりした。

そして、教室に入るとすぐ、




「じゃ、あたし部活行ってくる!じゃあね!」




と言って嵐のように去っていった。
元気だなぁ…



遥香以外に友達ができてないあたしは、
1人でぽつーんと立っていた。


みんな、帰ったり部活に行きはじめる。



「明石!」



後ろから声を掛けられて、びっくりして振り返ると
千真くんがいた。




「部活、なんか入るの?」





「あ、えっと、野球部に入ろうかと…」




「え!もしかして、マネージャー?」



「うん、そう…いやでも、本当は選手としてやりたいんだよね…
あたし、野球が大好きなんだ。趣味とか選手名鑑眺めることだし。
中学の時も、野球部入ろうとしたんだけど、女子は駄目だって言われて。
それって男女差別じゃないの?とか思いながらも、仕方なくソフトボ-ル部入ったんだよね。それはそれで楽しかったんだけどさ…
高校でも絶対無理だから超落ち込んだよ。だってね、あたし実は夢があって…」




そこまで喋って、はっとした。

うわ、あたし何長々と自分の事ばっかり…!
誰も聞いてないよ〜(汗)





「ご、ごめん!」




「や、いいよ?続けて?」




千真くん、笑いを必死にこらえてる。





「え?続けるって…」




「話の続き、聞かしてよ。明石の夢って、何?」




「う、うん。その、夢っていうのは…」




あたしはそこで、中1の時を思い出した。
友達にこの事を話したら、すっごい笑われた。



『無理に決まってんじゃん。』『現実見ろよ。』



夢を馬鹿にされて、悔しかった。

…だけど千真くんなら、話していいかな。




「こ、甲子園に、行きたいの。
アルプスで応援とかじゃなくて、ベンチに入りたい。甲子園のグラウンドに、立ちたいんだ。」




…千真くん、黙ってる。やっぱり、『馬鹿らしい』って、笑われるかな…



「…いいじゃん。」



え?



「俺も甲子園行きたいと思ってる。やっぱ、憧れだよなー。」



無理だ、とか言わないの?




「よしッ!!」





いきなりおっきい声を出したから、あたしがびっくりしてると、
千真くんがあたしの頭をくしゃっ、とした。







「お前の夢、俺が叶えてやるよ。」






「俺が明石を、甲子園に連れてってやる。
だから絶対、マネージャーになれよ!」








小学生の時TVで見た甲子園に、あたしは憧れてた。

でも、今までこんな風に言ってくれる人は、
1人もいなかった。



だけど千真くんが、
あたしの夢を叶える、そう言ってくれた。




「う、うん!絶対なる…!」




やばい、嬉しくて泣きそうだよ…




「んじゃ、約束な。ほい、ゆびきり!」




「「ゆびきりげんまん 嘘ついたら針千本のーます ゆびきった!」」



あたしは少し恥ずかしくって、顔が赤くなる。
それを見た千真くんは、あの笑顔で笑う。



…あ、まただ。何だろう、この気持ち。



胸がきゅっと苦しくなって、ドキドキして。
苦しいけど、それ以上にふわふわする。


…顔が、熱い。




あたし今日、なんか変だよ…


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