処方箋～ココロが疲れた時に～

◆振り子

** 振り子 **

傷ついたその身を守るように抱きしめる君

深い傷の痛みに耐えるように小さく膝を抱え殻に閉じこもる君


そんな君に掛ける言葉を僕は持たず

ただこれ以上傷つかないようにと願う事しかできない


人の心は脆いものだから

些細なことで傷ついて、心を大きく乱される

苦しみに囚われた君に励ましの言葉は痛いだけで

立ち直ろうと足掻けば瘡蓋（かさぶた）が剥がれ鮮血が噴き出す



ねぇ…



人の心は振り子のようなものなんだ

心が受けた衝撃が大きいほど、大きく弧を描き

苦しみが深い分だけ、長く揺れ続ける


大きく


ゆったりと


まるで子守唄を歌うように、緩やかな時を刻んで揺れる

それは痛みに耐え、苦しむ心を嘲笑うかのようで

君にとっては永遠にも感じるだろう長い時間

傷つく心は繊細で

その時間の長さに押し潰されそうにもなるだろう


だけど…


どんなに大きく揺れる振り子もやがては勢いを失っていく

永遠に揺れ続ける振り子はないように

永遠に乱れ続ける心もありはしない

波立つ心もいつかは穏やかに凪いでいく

深く傷ついた痛みも時が癒してくれるだろう


だからね

苦しいときは見つめてごらん

心の中で揺れる君の振り子を

ひとつ深呼吸して

心静かに振り子の軌跡をたどってごらん


少しずつ


ゆっくりと


だけど確実にそれは小さくなり


やがて静かに収まっていく



揺れ続ける心など決してない



ほら…



もうすぐ止まるよ…



傷つくことを恐れずに、顔を上げて一歩踏み出そう



大丈夫、怖がらないで…



少し強くなった君を信じてごらん




++ 振り子 FIN ++