双綴―ふたつづり―
「……違いますよ」

こぼすように呟いた声に反応し、セキの表情が一気に明るくなった。
 今の状況も忘れるほどの明るい笑顔。
 白夜は口角を釣り上げて笑う。
 黒耀にはまるで嘲笑うように見える白夜の笑みも、セキにはいつもの白夜の笑顔に見えているのだ。

「そうだよねっ!!白夜はやっぱり、姉様の味方――――」
「それも違いますよ」
「えっ……?」

突如として遮られた言葉は、頭を鈍器で打つような衝撃だった。
 白夜はくすりと、口元に手を当ててほほ笑む。

「僕はあなた方に仕える時に決めた、僕の信念を変えていません。あなた方が勝手に僕を信用したんですよ」
「………っ!!」


 絶望。


崩れ落ちる体を、黒耀が支える。刀がカシャンと音を立て、地面に転がった。

「セキ、しっかりしろ。セキッ!」

黒耀の声も届かない。
 両の眼から零れおちる涙は、止めどなかった。
 白夜は言葉を続ける。

「信用してくれてありがとうございました。あなたの信用を頂けるのは、心地よかったですよ」

にっこりと目を細めて微笑む白夜は、《いつか》に交わした笑顔で……。

「今までありがとうございました。セキ姫」

「あぁぁぁぁぁぁっ!!」

焦げる闇夜に、慟哭が響いた。



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