双綴―ふたつづり―
そう。今は紛れもない夜だ。
確かめるまでもない。
天を仰げば月も星も、陽の光には及ばずとも、確かに輝いている。
そう。今は紛れもない夜だ。
なのに、足元を見ればこんなにも明るい。だらりと垂れた右腕からしたたる血が、ちゃんと赤いのが見える。足元にある小石と砂利、砂の色も見える。
こんなにも明るい、足元。
それもそうだ。
顔をあげれば、目の前にはそれこそ、太陽の炎であるような、赤々と燃え上がる集落がある。
熱がじわりと肌を焼く。
誘われるように意識が揺れた。
抗おうと足を踏ん張ると、足元がジャリッと音を立てた。
誰かの声が後ろから聞こえるも、それが誰なのか、何を言っているのか分からない。
否、どうでもいい。
ただただ受け入れがたい現実を、少女は、あらん限りの憎しみで睨みつけた。
いや、あらん限りの憎しみでは余りある。
この心をどす黒く蹂躙するのは、憎しみを遥かに超えたところにある感情。
誰もがその言葉を知っていたとしても、魂が宿ったそれを真に知るは、おおよそ一握りの人間……。