双綴―ふたつづり―
 左腕に掴む刀の柄を、ギリッと握り締める。それこそ、爪が肉に食い込むほどに……。

 赤い光に照らされながらも、斬りつけようと立てた刃の紅が、それに負けることはなかった。


 風に運ばれてくる。
 不吉な、いくつも金属が重なって打ち合う。
 金切り声のような幾人もの凄惨な悲鳴。

 生木が炭へと化す匂いは焦げ臭く、血肉が炭へと化す臭いは、吐き気を誘う。
 あの紅蓮の中には、顔も知らない者も、親しく言葉を交わした者もいる。

 顔をあげるも、視界は歪む。
 泣くな。
 今、目の前に対峙する男に、情など通用するはずもないことは、自分がよく知っている。


 泣くな!
 震える足を叱咤した。

 噛み締めていた奥歯を解き放つ。




「なぜ裏切った、白夜っ!!」

あらん限りの力と激情を込めた声は、僅かに潤んでいた。

 紅蓮の炎が宿り、映り込んだ瞳はいっそう鋭く。
 少女《セキ》は、前方に言い放った。



 前方。
 そこには、宿した名を現したような青年が、銀の髪を風にそよがせ、黒い瞳でこちらを見ていた。
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