双綴―ふたつづり―
 熱風にさらされた銀の髪が、俄かに赤をまとって輝いていた。
 背後から照らす炎の光が逆光となり、彼の些細な表情までは読み取れない。

 胸が痛い。
 セキの手は、無意識に自らの胸ぐらを掴んでいた。

「どうして……このスクナを裏切った……!」

願いのこもった声は、ひどく頼りない。怒声を張り上げた時とは、明らかに感情が違うのだから。

 ふと、白夜の口角が僅かにつり上がった。

「裏切った、ですか……」

その口調は、ゆるりと余裕を持っていた常。記憶にある穏やかな声そのままだ。

「心外ですね。味方になったつもりもないのに『裏切る』と言われるのは」
「ふざけるな!」

セキより刹那早く声を発したのは、彼の実の兄・黒耀だった。
 しかし、黒耀の声でも白夜の表情や雰囲気は、揺らぐことはなかった。

「お前は女王ルリの補佐を務める立場――いやそれ以上に、亡き先王からルリとセキを守るように託されただろう!なのに、この顛末は何だっ!!」

「それは、汝らが矮小なれば……な」
「誰だ!」

 声の先にいたのは女。
 いつの間にか白夜の隣に立ち、優美な笑みをたたえて佇んでいる。
 夜のように暗い黒髪を、熱風に靡かせながら……。
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