双綴―ふたつづり―
「誰だ……」
セキの問いに、彼女はまず溜め息を返した。
「私を知らぬと申すか……」
投げ掛ける目線は、距離でどこを見ているのか確かではない。が、しかし確実にこちらを見ている。
明らかに見下して。
彼女の空気が癪に障るセキは、いっそう眉をつり上げた。
彼女は肩に掛かった豊かな黒髪を、背中へと撫で払う。
「我が名は『ヨミ』。世界の礎であるマーファが女王、アマテラスの娘だ」
黒髪の女――ヨミがその名を口にすると、辺りの空気が一瞬揺れた。それほど、彼女が口にした名前は重い。
嘘にはあまりにも大きく、冗談で言えるほど軽いものでもない。
恐怖というよりは、畏怖。
それほどまでに、『マーファ』と『アマテラス』という二つの言葉には威力があった。
目を丸くし、驚きの表情でヨミを見る二人。
それがヨミには心地好かったらしく、侮蔑の意味も込めて二人を、鼻で笑う。
「流石に、本来は歯牙にもかけぬ小国の王族では、私を知らぬも無理ないか」
思考回路が俄かに鈍る中、祖国をバカにされたらしいことだけは分かったセキが、叫ぶ。
「そこまで言うなら、何故マーファがスクナを狙った!?」
燃え盛る民草の営みは、そのままセキの怒りとなる。
セキの問いに、彼女はまず溜め息を返した。
「私を知らぬと申すか……」
投げ掛ける目線は、距離でどこを見ているのか確かではない。が、しかし確実にこちらを見ている。
明らかに見下して。
彼女の空気が癪に障るセキは、いっそう眉をつり上げた。
彼女は肩に掛かった豊かな黒髪を、背中へと撫で払う。
「我が名は『ヨミ』。世界の礎であるマーファが女王、アマテラスの娘だ」
黒髪の女――ヨミがその名を口にすると、辺りの空気が一瞬揺れた。それほど、彼女が口にした名前は重い。
嘘にはあまりにも大きく、冗談で言えるほど軽いものでもない。
恐怖というよりは、畏怖。
それほどまでに、『マーファ』と『アマテラス』という二つの言葉には威力があった。
目を丸くし、驚きの表情でヨミを見る二人。
それがヨミには心地好かったらしく、侮蔑の意味も込めて二人を、鼻で笑う。
「流石に、本来は歯牙にもかけぬ小国の王族では、私を知らぬも無理ないか」
思考回路が俄かに鈍る中、祖国をバカにされたらしいことだけは分かったセキが、叫ぶ。
「そこまで言うなら、何故マーファがスクナを狙った!?」
燃え盛る民草の営みは、そのままセキの怒りとなる。