双綴―ふたつづり―
「この世界が三分される中、スクナのみが態度を決めかねておる。故に、我がマーファが直々に傘下に加えてやると、わざわざ参ったのだ」
「ふざけるな!スクナは何処の国も侵さないと、三貴家を中心にした同盟に宣誓した筈だ!」
「だが―――」

冷ややかに返すヨミ。

「我らが貴様らを侵さぬと誓った覚えはない」
「嘘だっ!!」

叫んだ。
 間髪入れず、苛立ちを刀で振り払うように。
 なおもヨミは続ける。

「さらに、ルリ女王が軍備を増強しようとしている話も聞いた」
嘘だっ!ルリ女王がそんなこと、企てる筈もない!」
「真偽など問題ではない。疑わしきは罰せよ……ということだ」

ヨミの髪が、些細な顔の動きに揺れる。セキも自然と、そこへ目線を追わせた。
 重なった目線の先に、セキは目を見開く。
 心臓がドクンと波打った。
 激しく揺さぶられる感覚に、目が覚めるような思いがする。
 ぐらりと意識が揺れた。それが足へ伝わり、重心が揺れた。
 心が、嘘だと繰り返し否定する。が、頭はその障害を押し返しながら、疑問の闇を取り払っていく。
 押し寄せる濁流のような激情は口から這い出ることが出来ず、涙となって形を成した。
< 8 / 11 >

この作品をシェア

pagetop