双綴―ふたつづり―
激情をぶつけたい対象は、いつものように穏やかに佇み、微笑をたたえている。
いつもならこの距離でも、その微笑みが仮面かどうか、何となく分かるのだが……目の前の存在は、全てがあまりにも遠い。
セキは震える唇を動かした。
「白夜……。これは私の想像だから、嘘だって言って……」
願望が言葉になっていると気づかない。
「白夜は、姉様の補佐役という地位を利用して、隣にいるマーファの女王とやらに近づいて、スクナを領地に差し出した。……違うよね?」
張りつめた糸が、軋み始める。
最後の一言は、旧知の仲にすがるような、酷く女々しい響きだった。
白夜の表情は変わらない。
いや、彼を包む空気さえも……。
共にいた十年という月日は、彼の魂に語るには、足りないのだろうか。
返答がない。無言の間が、キリキリと胸を締め付ける。
「応えろ、白夜っ!!」
涙声を絞りだし、刀の切っ先を向ける。
白夜は思いを馳せるように、固く瞼を閉じていた。
その瞳が開かれたのは、セキが呼吸を整える程度の間だった。
白夜も、自分の武器の柄を握りしめる。それこそ、肉に爪が食い込むほどに……。
いつもならこの距離でも、その微笑みが仮面かどうか、何となく分かるのだが……目の前の存在は、全てがあまりにも遠い。
セキは震える唇を動かした。
「白夜……。これは私の想像だから、嘘だって言って……」
願望が言葉になっていると気づかない。
「白夜は、姉様の補佐役という地位を利用して、隣にいるマーファの女王とやらに近づいて、スクナを領地に差し出した。……違うよね?」
張りつめた糸が、軋み始める。
最後の一言は、旧知の仲にすがるような、酷く女々しい響きだった。
白夜の表情は変わらない。
いや、彼を包む空気さえも……。
共にいた十年という月日は、彼の魂に語るには、足りないのだろうか。
返答がない。無言の間が、キリキリと胸を締め付ける。
「応えろ、白夜っ!!」
涙声を絞りだし、刀の切っ先を向ける。
白夜は思いを馳せるように、固く瞼を閉じていた。
その瞳が開かれたのは、セキが呼吸を整える程度の間だった。
白夜も、自分の武器の柄を握りしめる。それこそ、肉に爪が食い込むほどに……。