【超短編 07】虫歯菌大決戦
先生の指示に従い、うがいをして横になったまま待っていると、歯科助手の女の子が1メートルくらいの木の棒を持ってきた。プロレスラーの腕の太さくらいあるその棒の片側は幾重にも布が巻かれ、逆側には無作為に釘が突き出していた。それはまさに棍棒だった。
「今、先生が来ますのでもう少し待っていてください」
歯科助手が僕の傍にそれを置くと、すぐにその場を離れた。間もなく先生が現れ、神妙な面持ちで僕にこう言った。
「いいですか、田中さん。今からあなたには、そこの棍棒を使って虫歯菌を退治してもらいます。手加減せずに思いっきりやってください」
僕は言葉にならない声を上げて、体を起こした。
「ちょ、何をふざけてるんですか。ちゃんと治療してくださいよ」
先生は真面目な顔のまま話を続けた。
「いいですか、田中さん。私は至って真剣です。あまり知られていませんが虫歯菌は10年間も放置すると、宿主が退治するしか今の医療では打つ手がないんです。私もできるだけフォローしますから大丈夫です。なに、怖がることはありません。10年前の治療に比べれば、痛くありませんから」
どうやら僕は覚悟を決めるしかないらしい。虫歯菌がどんな形で出てくるのかは想像もつかないが、口の臭いオジサンになるくらいならやるしかない。
僕は意を決して棍棒を手に取った。うまく倒せたらそのまま彼女にプロポーズもしよう。
仲人は虫歯菌に頼むべきかもしれない。
「今、先生が来ますのでもう少し待っていてください」
歯科助手が僕の傍にそれを置くと、すぐにその場を離れた。間もなく先生が現れ、神妙な面持ちで僕にこう言った。
「いいですか、田中さん。今からあなたには、そこの棍棒を使って虫歯菌を退治してもらいます。手加減せずに思いっきりやってください」
僕は言葉にならない声を上げて、体を起こした。
「ちょ、何をふざけてるんですか。ちゃんと治療してくださいよ」
先生は真面目な顔のまま話を続けた。
「いいですか、田中さん。私は至って真剣です。あまり知られていませんが虫歯菌は10年間も放置すると、宿主が退治するしか今の医療では打つ手がないんです。私もできるだけフォローしますから大丈夫です。なに、怖がることはありません。10年前の治療に比べれば、痛くありませんから」
どうやら僕は覚悟を決めるしかないらしい。虫歯菌がどんな形で出てくるのかは想像もつかないが、口の臭いオジサンになるくらいならやるしかない。
僕は意を決して棍棒を手に取った。うまく倒せたらそのまま彼女にプロポーズもしよう。
仲人は虫歯菌に頼むべきかもしれない。