残り10cmの恋
「ここだよね?」
高木くんに、話しかけられた。
いや、質問された。
「あ、うん。そうです…」
「隣の席の人だよね。よろしくね?」
「あ、よ、よろしく…」
挨拶を交わすだけで、冷や汗が出てきたよ…。
もう、なんか、隣に座ったらいけないような気がしてきた…。
女子の視線を感じる………。
健…私は、高木くんに恋をすることはないでしょう。
こんな、かっこいい人に恋をしても無駄なだけだからね。
ホームルームが、終わるとすぐに
高木くんの周りには人だかりができた。
私も、座ってられなくなったので廊下に避難した。
「予想以上だったね」
ひとみは、平然としている。
「の割には、全然ときめいてないじゃん、ひとみ!」
「遥は、ときめいたんだ?」
ひとみまで、ニヤニヤして聞いてくる。
「そんなんじゃ、ないよ!」
でも、高木くんと、同じグループっていうのはちょっと苦しいかもしれない…。
私とは、程遠い人だし、絶対!
教室に目をやると、他のクラスからもたくさんの女子が来ている。
これは、しばらく大変だ…と思った。
「俺、教室居るの無理だわ…」
げっそりして教室から出てきた竜と健。
「人口密度やばいから」
「グループ大丈夫かな…」
女の子ばかり、寄ってきて大変なことになるのが想像できる。
皆も、それを想像したのかため息が漏れた。
「とりあえず、頑張るか…」
「「うん…」」
教室には、チャイムがなるまで入れないほどの人の多さなので、ずっと廊下で時間をつぶしていた。
やっと、チャイムがなって
皆が居なくなったと思ったら、私の席は押されて位置がめちゃめちゃに…。
「マジで…」
直そうとしたら、高木くんが来て
「ごめんね、俺がやるから」そう言って
私の席を直してくれた。
「ありがとう…」
高木くんは、私が、座りやすいように
椅子と机のあいだまできちんと開けてくれて自分も座った。
「いえ、いえ」
また、眩しすぎる笑顔っ…。
「「いいな…」」
周りの女子からそう聞こえた。
優しいんだけども、かっこいいその笑顔で
言われると、こっちも色々困る…。
気を取り直して、席についた。
後ろから健が「男前すぎるだろ」
とボソッと言ったのは気にしない。
「はい、じゃあ、この時間は広島のグループ活動についての話し合いの続きだから、グループごとに机を合わせて!」
「先生ー、高木くんは、どこのグループなんですかぁ?」
「あ、高木は、神田たちのグループに入ることにしたから」
先生が、そう言った瞬間「え?ずるい!!」「あのグループ最高すぎるじゃん!」「高木くん欲しい!」と言う声が次々と聞こえてきた。
そりゃあ、そうだよね…。
モテる、健と竜、ひとみに加え高木くんまで入ったグループなんて、凄すぎるよね…。
私、いていいの?!!
だいぶ、へこむ…。
「ここは、4人グループだから、だ。
いいから、グループ活動についての話し合いを始めるぞ」
先生が、無理矢理まとめて、ようやく
収集がついた。
私達も、皆で机を合わせた。