オウリアンダ

マンチさんこんにちは

 アキラが椅子に腰掛ける。ようやくセッティングが終わったようだ。
 アキラはポケットから焼肉店で俺に見せた大麻とオイルライターを取り出し、机の上に置いた。
「まずは乾杯といこうぜ。」
 アキラがエナジードリンクをプシュっと開けた。続いて俺も蓋を開ける。
 俺達はカンッと心地よい音を鳴らして乾杯をした。
 アキラに『飲み終えても缶は潰すな』と釘を刺された。最初、俺はこのエナジードリンクの意味がわかっていなかった。
 ドリンクを全て飲み終え、俺はアキラに言われていた通り、缶を潰さず机の上に置いた。
 アキラがヴィクトリノックスのナイフを持って来た。
 その持ち手から短い方のブレードを取り出した。何をするんだろうと見ていると、アキラは缶の真ん中を両親指で潰した。
 缶を2つに折り曲げた感じだ。
 そのまま飲みくちがない方を凹ませて、少し平らにした。
 次に平らにした箇所にナイフの先でプスプスと穴を開けていく。
 2つ目の缶にも全く同じ作業をした。かなり手馴れている。
 完成した物の一つを俺に渡してきた。
「これを使え。今はボングもパイプもないからよ。」
 受け取って初めて、この空き缶をどう使うかがわかった。
 大麻を吸引する時は主に、ボング(水パイプ)、ジョイント(専用の紙で包み、巻きたばこの様にする)、パイプを使う。
 パイプはアルミホイルで作る奴も居れば、雑貨屋などでも簡単に手が入る。
 アキラは空き缶でパイプを作るのが好みだったようだ。
 パケを開封すると、アキラはその中身をナイフで穴を開けた手作りの火皿の上に一つまみ置いた。
 ライターの蓋をシャキッと開け、着火する。その火を火皿の上まで持ってきた。
 息を吸いながらネタに火をつける。
 煙を吸い込むとしばらく息を止め、濃い煙をフゥーと口から出した。
 ちなみに俺はタバコは吸わない。吸わないと言うと意外だと言われるが、親父がいつもタバコをバカスカふかしていたので、自然に嫌いになった。
 だからこの歳になっても、タバコの吸い方もよくわかっていなかった。
「タバコみたいに吸うなよ。10秒くらい息を止めるんだ。」
 アキラからライターを受け取った。
 かなり緊張する。
 アキラが着火したままのライターをゆっくりとネタに近付ける。
 俺はさっきのアキラの見様見真似で思い切って煙を吸ってみた。
 1、2、3、4、5…
「ブハァ!!ダメだ!タバコも吸わないから咳が我慢できない!ゴホゴホ!」
 俺は10秒も息を止める事はできなかった。何度やっても途中で咳が出る。
 むせる俺を見て、アキラがゲラゲラ笑っている。
「タバコを吸ってても、最初はそんなもんだ。あと、初めてならあまりキマらないかもしれないぞ。俺は三回目くらいでようやく良さがわかった。」
 そうなのか。それにしても独特の味、独特のニオイだ。
 火がスグ消えるので、何度も何度も火をつけた。
 しばらく吸い続けたが、特に変化は起きなかった。
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