桜花
◇◇◇
次の日、空はどんよりと夜のように暗かった。
今はまだ雨が降っていないが、じきに降って来るだろう。
鏡花は上体を起こし、ぼんやりと外を見ていた。
遠くの空でゴロゴロという音が聴こえた。
そのとき祖母が部屋に入って来た。
「鏡花、朝ごはんできたから下においで」
「うん」
鏡花は布団から出て階段を下りて居間に向かう。
「おはよう、おじいちゃん」
「おー、鏡花。大丈夫か?
痛いとこはないか?」
「大丈夫。昨日はごめんね」
「本当にびっくりしたぞ。いきなり倒れるんだからなぁ」
「うん。もう大丈夫だから。ありがとう」
「次、また倒れるなよ」
「うん」
鏡花を心から心配してくれる祖父の気持ちが凄く嬉しかった。