桜花
この小説は五つ程の短編小説が入っている本で、その内の一番最初にある話から題名をとっている。
鏡花はその最初の物語が好きだった。
主人公は黒い犬で、その犬の感動の話だ。
最初、この小説を見たときは題名に惹かれて読み始めた。
すると物語にどんどん引き込まれていき、今までにないほどの感動を覚えた。
それから何度も何度も読み返し、表紙が少しくたびれるほど繰り返し読んだ。
鏡花は栞を挟んでいた所から読み始めていたが、突然窓から閃光がパッと散ったかと思うと、天が裂けたかと思う程の凄まじい音が聴こえた。
「……っ!」
鏡花は思わず肩をビクッと跳ねさせた。