桜花


霞の案内で以前熊か何かが掘ったであろう穴に入った。


雨が染み込んできてはいるが、外にいるよりはかなりましな場所だった。

霞は鏡花を座らせて落ち着かせる。


「っ……ひっく……」


鏡花はすすり泣いてはいたが、取り乱してはいなかった。


それをみて霞は声をかける。


「鏡花様。私は桜花様に仕える霞と申します。


以前、あなたが小さい頃に姿を見せたことがあります、白い蛇ですが覚えていますか?」


桜花に仕えているというところと、白い蛇で霞は人ではないことが鏡花にはわかった。


しかし、鏡花は覚えていなかったらしく、首を左右にふった。


「そうですか。
では、桜花様の話をしましょう」


「桜花は大丈夫なの!?」


桜花と聞いて鏡花は目に涙を溜める。


「落ち着いてください。さっきの雷で桜花様は消えかかっている状態だと思います」


「消えかかっている?」

霞の表現に嫌な予感をかんじながらも尋ねた。

「人で言うところの死、です」


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