夢おとぎ 恋草子
おそらく私の一方的な想いだったに違いないがね。
初恋は成就しないとはよく言ったものだ。


しかし・・・ 
内親王さまと過した束の間の時こそが
私にとっての桃源郷だったのだよ。
そして内親王さまはそこに懸かる月だ。
どれほど切望しても 手を伸ばしても 
決して触れることはできない・・・永遠の月。


それからだよ。
いくら心からお慕いしていても 
家柄や身分が隔てになるのなら
本気にならなければいいのだと思うようになったのは。
家柄や身分に縛られない気遣い無用な女人との恋を
泡沫に楽しめばいい、とね。


あぁ・・・ 
こうして改めて思い返してみると
随分と長い年月を かりそめの恋を重ね 
浮名を流してきたのだな、私は・・・


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