夢おとぎ 恋草子
そう仰って後、ふと遠い目をなさった殿に
私は胸の奥がちくりと痛むのを感じました。



「いけない。 つい長くなってしまったね。
昔語りが長くなるなんて年寄りのようだと笑われそうだな」と
嘲笑なさった殿はさてと、と扇を畳んでお立ちになられました。 



「少し酔ったようだ。夕餉まで部屋で休むとするよ」



軽く手を挙げ、部屋をお出になられた背が
美しい夕焼けに映えて・・・
またひとつ、殿の印象的なお姿が
お話とともに私の脳裏に焼き付いた瞬間でございました。



【初恋】 終


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