夢おとぎ 恋草子
一帖
さてと。最初に綴るお話はどのお話にいたしましょうか。
ん!そうですわ、あれがいい。
けれど 最初のお話のお題が
最後の夜 というのは如何なものかと
思わなくもないのですが・・・
甘美なる艶めきと切なさが相まった
私のお気に入りのお話でございますゆえ
記念すべき始まりの一遍といたしました。
私がまだこちらにお仕えする前ですから
今から三年ほど前のお話でございます。
お楽しみいただけましたら幸いにございます。
尚 お話のすべては殿が一人称の書式でございます。
殿が今、皆さまの目の前で語られているかのような臨場感を
ご堪能くださいまし。
では 参りましょうか。
時は中秋。
乾いた涼風が萩の葉を揺らしながら虫の音を運ぶ宵の頃・・・