本気の恋をしようじゃないか《加筆修正版》
頬の腫れが引いたので俺はみんなのいる席に戻った。
「小牧何やってんだよ。どんだけ長いトイレだよ」
同僚の上野が含みのある言い方で俺を見上げた。
「お前わかってて嫌みな事言うなよな」
女が帰って来ず、俺が遅く戻ってきたとなれば
なにかあったっのだろうと想像を膨らませていたようだ。

何だか面白くない・・・つまらない。
そう思ってイスに座ろうとした時だった。

俺の席の前の前のカウンター席に女2組が酒を飲んでいた。
一人は芋焼酎、そしてもう一人は・・・ハイボール。
一人は・・・かなりの美人だがさばさばした感じで
さっきの女とキスするくらいならあの女の方がいいと思った。
そしてもう一人は・・・・髪の毛が長くてなかなか顔がはっきりと見えなかったが
2人で笑い合っている時に髪の毛を掻きあげた。
その瞬間俺は自分の目を疑った。

夢でも見ているんじゃないかと思った。
さっきずっと杏奈の事を思い出してたから
幻覚でも見てるのかとも思った。
髪の毛を掻きあげた女は俺が忘れたくても忘れられない人で
本気の恋愛をしたのは後にも先にも彼女だけだった。

香坂杏奈だ
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