本気の恋をしようじゃないか《加筆修正版》
教室にはいるともう誰もいなかった。
黒板に
『小牧へ
 先にかえるよ
    村田、佐々木』
と書かれていた。
きっと小牧くんを待っていたんだけど辛抱たまらず帰ったのだろう。
「小牧君ごめん・・・私の手伝いなんかしなきゃみんなと帰れたのに」
黒板を消す小牧君の背中に向って謝った。
私はそのまま自分の席まで戻ると急いで帰り仕度を始めた。
だって小牧君とこれ以上話す事もないし、もし一緒にいるところを誰かに見られでもしたら陰で何を言われるかたまったもんじゃない。
そして教室を出ようと入り口に目をやると
いつの間にか小牧君はカバンを持って入り口で待ち構えていた。

「帰るから・・・どいてもらえるかな・・」
遠慮がちに言うが小牧君はどこうとしない。
「あの…?私帰りたいのだからーー」
どいて
そう言おうとしたのに小牧君は前かがみになって私を覗き込むように見つめた。
「一緒に帰ろう?」
私の鼓動が一気に加速する。
ドキドキしてこの音が聞こえているんじゃないかと言うほど。
だけどなんで私なの?
大体、話するほど仲良くないし、共通する話題だってあるとは思えない。
答えに困っていると、小牧君の手が私の腕を掴んだ。
「こ、小牧君?!」
驚きのあまり声が裏返る。
「手を繋いでもいいと思ったけど、香坂さん卒倒しそうだから」
フフッと笑いながら引っ張られた。
困った・・これこそ誰かにみられたらヤバいレベルだ。
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