本気の恋をしようじゃないか《加筆修正版》
手を繋いだまま私たちは会話もなしに歩いていた。
バス停を素通りし、公園の方へ向かっているのはわかるが時々見せる小牧君の横顔に笑顔はなく、怒っている様に見えた。
こんな小牧君初めて見た。
いつも笑顔で誰にでもやさしい小牧君じゃない。
そんなに怒ってるなら手を離してもいいのにと思うのだが、握った手が離れることはなかった。

公園に着くと、近くのベンチに座った。
自然と手が離れるとさっきまで温かった手が一気に冷えた。
小牧君は急に立ちあがると、目の前の自販機の方へと歩き出した。
「あっ!」
何か飲むのだったら私が・・・そう思ったが
財布を出した時にはもう飲み物がガラガラと落ちる音がして私は小銭入れを膝の上に置いてしまった。
「はい・・これ」
差し出されたのは温かいミルクティーだった。
「お金」
膝の上の小銭入れを開けようとするが、小牧君はそれを手で止めた。
「いいよ・・・」
その声にいつものやさしい小牧君はいなかった。
猫舌の私はしばらくの間ミルクティーを両手で持ちカイロ代わりにしていた。
「飲まないの?」
口調はさっきと変わらない。
「私猫舌だからちょっともうちょっとしたら飲むね」
小牧君の口が少しだけ緩んだ。
今なら謝れる・・・・
「小牧君・・・電話出れなくてごめんなさい。まさかこんなに着信があったなんて気がつかなくて」
缶を持つ手に力が入る。
だけど小牧君は黙っている。
連絡しなかったのは悪いと思ってるけど、相当怒ってる?
だんだんと気持ちが沈む。
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