本気の恋をしようじゃないか《加筆修正版》
「ねえ、正月ってなんか予定あるの?」
帰り支度をする私の横で小牧君が訪ねた。
「うん……毎年お正月はおばあちゃんのとこで迎えるんだ」
「……そうなんだ」
私も本当は会いたいんだけど年に数回しか会えないおばあちゃんにも会いたかった。
「帰ってきたら連絡する。そしたら一緒に初詣にいきたいな」
我儘な言い方だと思う。
私が帰ってくるまで初詣に行かないでほしいって言っているようなもんだし……
だけど小牧君は笑顔でいいよと言ってくれた。


「ここでいいよ。外は明るいし・・・一人で帰れる」
「嫌だよ・・・送ってくって。って言うか本当は帰したくない」
家に帰る私を小牧君は送っていくと言ってくれたが、なんだろう一人で帰った方がいいのではと思った。
女の勘ってやつなのかな?
だから小牧君の申し出を丁寧に断った。
小牧君は鍵をかけるとジーンズの後ろポケットに鍵をしまい手を差し出した。
「手を繋ごう」
にっこり笑う小牧君の手をそっと取ると、手を絡める。
そして絡めた手を自分の唇に当て、チュッとキスをした。
「小牧君!」
慌てて腕を引っ込めようとすると
「これくらいいいじゃん。本当はもっと一緒にイチャイチャしたかったんだから」
不服そうに口を尖らせる表情がとてもかわいいと思った。

私達は手を繋ぎながら小牧君の家を後にした。

だがその後小牧君の家に行くことは2度となかった。
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