紅い記憶と廻る時
500年前の忘れモノ
室町の夢
視界に広がる灰色の空。辺りに立ち込める火薬と血のにおい。
隠れるように、僕は大きな岩に寄りかかっていた。
遠くの方で聞こえる、人の雄々しい叫び声と、断末魔のような耳障りな悲鳴。
時折、パァンパァンと鉄砲を撃つ音や、刀がぶつかる音、馬が駆ける音も聞こえる。
人間同士が戦ってるみたいだ。
───ここ、何処だろう?
気が付いたら、僕は此処にいた。
疑問に思ったけど、すぐに分かった。
───あぁ、これは夢だな。
だって、僕は何処にでもいるような普通の男子中学生。
いきなりこんな戦場に来る理由なんて無い。
こんなリアルな夢、見ていていい気はしない。早く目を覚まさなければ。
「いっ……?!」
少し身体を動かそうとすると、手首と足首がひどく痛んだ。
見ると、猿轡のようなもので、きつく縛られていて、身動きが取れない。
―――なんだよ、これ?!