紅い記憶と廻る時
隠し事
目を開けると、明らかに体育館のものではない、白い天井が視界に入った。
「あ、伊ヶ崎くん起きた!」
次に、尾浜がにょんっとフレームインしてくる。
「君、脳震盪で倒れたんだよ」
平の言葉で思い出した。
そっか。僕、竹刀が面に当たった時……
起き上がろうとすると、大きい手が頭に乗った。
「……無理、するな……まだ安静に……」
黒門だ。
「ちょっと、藤吾(とうご)!言いたい事、あるんでしょ?こっち来なよ!」
尾浜が一人の男子を呼んだ。
「あ……うん。伊ヶ崎、俺、能勢 藤吾(のせ とうご)。お前と剣道でペアだった奴。……ごめんな。力加減ミスった」
能勢は短髪をガシガシと掻きながら、申し訳なさそうに頭を下げた。
目がキリッとしてる凛々しい感じでかっこいい顔なのに、しょげてると全部台無しになってしまってる。