紅い記憶と廻る時
「にーに、おっそい!クナ、もう食べ終わっちゃった!」
「イナも!にーにと食べたかったのに、もう食べ終わっちゃった!」
「ごめんごめん」
さすが双子。反芻するように姉のクナに続く妹のイナ。
二人揃って僕にベッタリなブラコンだから、こういう時面倒くさい。
母さんと父さんも食べ終わったみたいで、のんびりとコーヒーを飲んでる。
ふと、母さんが口を開いた。
「ねぇ、颯人。……自分の名前に疑問をもったこととか、ない?」
「え?自分の名前?なんだよ、いきなり……」
『伊ヶ崎 颯人(いがさき はやと)』。これが僕の名前。響きが良くて割と自分でも気に入ってる名前だ。別に疑問も何も抱いてない。
「別に……?苗字はちょっと珍しいかもだけど、気に入ってる名前だよ」
「そういう意味じゃ……あー……何でも無いわ。ちょっと思っただけ。」
?変なの。
名前なんかよりその質問自体のほうが疑問だ。
そう思いながら僕は目玉焼きとベーコンの乗ったトーストをかじる。
───苦い。焦げてる。クナかイナが母さんの手伝いで作ったやつだな……。