紅い記憶と廻る時
「じゃ、そろそろ行ってきまーす」
通学かばんを肩にかけ、玄関へ向かう。
クナとイナと、父さんがドタドタと見送りに来た。
「「「いってらっしゃーい」」」
父さんはまだ勤務時間じゃないらしい。まぁ、小さな工場の工場長だから、多少遅刻しても叱る人がいないから大丈夫だろうけど。
「友達たくさん出来るといいなー!」
カラカラと笑う父さん。小学生じゃあるまいし。僕、もう中学一年生なんだけどな……。
トテトテとクナとイナが、運動靴に履き替えている僕に寄ってきた。まだ僕と居たいのか。
「何?行って欲しくないの?」
フルフルと同時に首を振る二人。小さなツインテールもそれに合わせて揺れる。
そして、やけに大人びた表情になると、
「「……行ってらっしゃいませ、我らの主君!!」」
しゅ、主君?小一の女子がよくそんな言葉知ってるな……
でも、主君ってご主人って意味だよな。実の兄に言う言葉じゃ無いと思うんだけど。