紅い記憶と廻る時
「い、伊ヶ崎くん!あたしのこと、分かんないかな?……覚えてない?」
朝のホームルームが終わり、数人のクラスメイトからの質問攻撃も落ち着いたところ。
例の四人のうちの一人、身長稼ぎっぽいハーフアップのチビ女子がいきなり僕の席に来て話しかけた。
なんか、どこか不安そうな感じの表情を浮かべてる。
「えーと……ごめん、どこかで会ったっけ?」
「……そっかあ、ならいいんだ!あたしの勘違いかもしれないし!」
彼女の表情が、今度は安堵と困惑が混ざったようになる。
―――僕、この娘に会ったことあったっけ……?
頭の中で瞬時に、物心付いた時から現在までの記憶を漁ってみたけど、この四人はその中のどこにもいない。
……やっぱり向こうの勘違いか。
「あは、いきなり変なこと聞いちゃってごめんねー!あたし、尾浜 苗子(おはま なえこ)。伊ヶ崎くんの後ろの席だから、よろしくねっ」
「あ、うん。よろしく」
じゃぁまた、と言ってから、トトトっと弾むように尾浜は廊下に出た。