イケない隣人
綾は私に近付いてそう一言。

ズキっと私の胸に痛みが走る。


「まぁ・・・いつもの事だから」


私は俊の後ろ姿を見ながらそう呟く。


本当は全然平気じゃない。
好きな人が女の子に囲まれてて平気な訳じゃないじゃん・・・。


少し涙が目に溜まる。


そんな私を見た綾は私の頭を撫でながら、


「大丈夫だよ。俊クンも相手にしてないんだし!気にする事ないって!」


と元気づけてくれた。


・・・・そうだよ。綾の言う通り。


気にする事ないよね。
一々気にしてたら切りがないもんね・・・・。


そう自分に言い聞かせて皆が騒いでいる教室に入った。



私は俊とクラスが離れている。


クラスは隣同士なんだけど・・・やっぱり女の子に囲まれている俊が目に入ってしまう。



「はぁ・・・・」


席に着くと、大きな溜め息が思わず口から出た。


最近・・・幸せが逃げてる気がする・・・。


昔、お母さんに言われた。


「どうしても辛いときは泣き叫んでいいのよ」


って…うん。今凄く泣き叫びたいよ。

でも、これくらいの事で泣き叫んで溜まるかって思っちゃうんだ。


お母さん…こういう時はどうすればいいの?


誰か……私の涙を掬ってよ。

私を楽にさせてよ…。



「ほら。皆席着け~」



私と正反対な声が教室中に響き渡る。

そんな声を気にもせずに少し風が入ってくる窓から外を眺めた。


私の席は窓側で調度夏には涼しい席。



「それじゃ今からHRを・・・」


耳で担任の声を聞き取る。

サワッ・・・


と涼しい風が私の髪に触れた。



「嘉穂・・・かーほ!」


「・・・へ?!何?」


声の方を見ると、少し心配そうな顔の綾がいた。


そういえば・・・綾は同じクラスだったね。


「HR終わったよ?」


黒板を指差しながら苦笑いで私を見る。


「・・・あっ。本当だ!」


全然・・・気付かなかった・・。


「嘉穂〜ボーっとしちゃ駄目じゃん!」


綾はそう言って私のほっぺを掴む。

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