君と春を
「美月!聞いたよー!
佐原君に告られたんだって?
テニス部の後輩が見たって!」
放課後そう言ってわたしのところに駆け込んできたのは木本茉莉。
人見知りである私の、唯一の親友だ。
「しかも美月が佐藤君好きなの知ってて俺のものになるってって宣言したんだって!?
きゃー!すごい!美月どうするの!?」
クルクルとよく変わる表情と愛らしさがこの子の最大の魅力だ。
私には……そんなのない。
「茉莉…。どうって言われても私は…」
佐藤君が好きなんだもん。
彼が私を向かないのはわかっていた。
彼女がいるって言われたから。
でも…なかなか忘れられなくて。
そんな私を側でずっと見てきた茉莉。
「…前向きに考えてみたら?
いきなり佐原君を好きにはなれなくても、歩み寄ってみたらいい所も見えてくるかもでしょ?
そしたら好きにもなれるかも。」
茉莉の言うことは最もだ。
いつまでも届かない想いを引きずるのがいいとも思えないこともわかる。
「…ありがと茉莉。
……そうだね。頑張ってみようかな。
佐原君、ステキな人だと思うし。」