君と春を



突然蘇る記憶。

一気に冷たく強張る身体。

「……っ!や…あっ!」

あの時の、蹂躙する手、無理矢理塞がれる唇。恐怖と絶望。


「やだっ……!やめて!優也!」


……………っ!


ハッとして彼を見る。


その顔は、一瞬驚きを浮かべ、哀しく歪む。

「………美月?俺に触られるの…嫌だった?」

「…………………」

否定したいけれど、蘇った恐怖に支配されて口が動かない。

「…美月?」

「…っ!」

咄嗟にありったけの力で彼の腕から離れ、半ばパニックでバスルームに逃げ込む。

溢れる涙。震える身体。膝から崩れるようにへたり込み、呼吸が浅くなっていく。


ダメだ。


私はきっともうあの時、愛される権利を失ってしまったんだ。



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