君と春を
涙が枯れてやっと落ち着いた美月の髪を撫で、頬に優しく口付ける。
「今日はこのまま、抱きしめて眠ってもいい?」
その言葉にピクリと反応し、恥ずかしそうに俺を見上げる美月。
「あ………、はい。」
……こんなに可愛いのに手放せる訳がない。
「何もしないよ。ただ、抱きしめて眠りたい。」
……美月の表情が曇る。
「慎汰さんは……やっぱり私みたいなめんどくさい女、抱きたくないですか?」
「…………は?」
「私は……慎汰さんに触れられたいです。」
「美月?」
「過去なんて消え去ってしまうくらい慎汰さんでいっぱいにして欲しい。」
その表情はいつになく真剣だ。
「過去に囚われたままでいたくない。
慎汰さんと、ちゃんと前を向いて進みたいんです。
だから……っ!」
堪らず、唇を塞ぐ。優しく優しく、慈しむように口づけを何度も落とし、額を合わせて囁く。
「………せっかく抑えてたのに、そんな風に言われたら努力が水の泡じゃん。
…………怖くないの?俺は美月に怖い思いをさせてまで抱きたくない。」
「…わかりません。だけど、私だって慎汰さんに触られたい。それを、過去に邪魔されたくない。
………ダメですか?」
この子は……こんな時まで俺の心を持って行くのか。
「……ホントは俺も……そんな過去吹き飛ぶくらい、愛されるってどういうことか教えてやりたいよ。
美月の心も身体も俺でいっぱいにしたい。
俺の心も身体も、美月でいっぱいにしたい。」
「慎汰さ……んっ!」
優しく、愛おしさを伝えるように何度も口づける。背中に手を回し、ソファに押し倒す。
「…美月を愛したい。……でも後悔はしたくないし、させたくない。」
「…っ。慎汰さんを受け入れるのに後悔なんてするわけないです。
お願いします……。私の全部、愛してください。」