君と春を

バースデー




パーティ会場で秘書として振る舞う。

海外ゲストのところへも積極的に動き回る慎汰さんはやっぱりかっこいい。

私もついて行くのに必死だ。

「春瀬!」

ふと名前を呼ばれ、慎汰さんが振り向く。

視線の先の男性は和かに手を振り、慎汰さんもそれに応えていた。

「先輩。ご無沙汰してます。
お元気でしたか?」

そう話すところを見ると、時期社長という先輩なのだろう。

「君が噂の彼女?」

「あ、えっと……。秘書の冬瀬美月と申します。」

慎汰さんとの会話もそこそこに私に向き直るこの人は長身に短髪の爽やか好青年といった印象だ。

「僕は相沢宗馬。宗馬って呼んでね、美月ちゃん。

春瀬、お前こんな可愛い子とイチャイチャしてんの?

モデルとかも色々来てるけどスタイルといい品や身のこなしといいピカイチ。

さっきから見てたけどデレデレなのバレてるよ。

だいたいさ、さりげなく腰とか触りすぎ。」

……撤回。好青年じゃなくチャラ男?

有無を言わさず手を握られそうになるが、慎汰さんがその手を握り返して触るなとばかりに牽制した。

「………先輩?いくら先輩でもこいつはダメです。触らないでくださいね?」

傍目には和かにしているようで明らかに目は笑っていない。

「………ふふ、本当に本気なんだな。
いや、驚いたよ。

あの春瀬が本気になったなんて半信半疑だったんだけどね、おもしろいもの見れたな。

美月ちゃん、ウチのジュエリーよく似合ってる。

しかもその指輪、この間ウチのショップで春瀬がデレデレしながら選んでたやつでしょ?

ま、仕事がら目は確かだよな。上から下まで完璧だよ。

じゃあまた後でね、美月ちゃん。」

そこまで言うと相沢さんはまた他のゲストの元へ行った。

指輪を選んでたことをバラされた慎汰さんはちょっと顔が赤い。

「…………デレデレしてたんですか?」

「……いや、そんなわけないだろ。
真剣に選んでただけだ。」



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